食道がんの基礎知識

食道とは、食道がんとは?

1)食道のつくりと働き

図1:食道の解剖

図1:食道の解剖

食道は、のど(咽頭)と胃の間をつなぐ長さ25cmぐらい、太さ2~3cm、厚さ約4mmのくだ状の臓器です。食道の大部分は胸の中(約20cm)ですが、一部は首(約3cm)と腹部(約2cm)にもあります。食道は身体の中心部にあり、胸の上部では気管と背骨の間にあり、下部では心臓、大動脈と肺に囲まれています【図1】

食道は、口から食べた食物を胃に送る働きをしています。食物を飲み込むと、筋肉でできた食道の壁が動いて食べ物を胃に送り込みます。食道の出口には、胃内の食物の逆流を防止する機構があります。食道には消化機能はなく、食物の通り道にすぎません。

2)食道がんの進行と発生

図2:食道壁の構造(組織像)

図2:食道壁の構造(組織像)

食道がんは食道の真ん中か、下1/3に最も多く発生します。がんは食道の内面をおおっている粘膜から発生します。

食道の粘膜は扁平上皮でできているので、食道がんの90%以上が扁平上皮がんです。がんが大きくなると粘膜を超えてその外側にある粘膜下層、さらに筋肉の層(固有筋層)へと入り込みます。もっと大きくなると食道の壁を貫いて食道の外まで拡がっていきます。

食道の周囲には気管・気管支や肺、大動脈、心臓などの非常に重要な臓器が近接しているため、食道壁の外にまで拡がるとすぐにこれらの臓器にも入り込んでいきます。粘膜にとどまるものを早期がん、粘膜と粘膜下層にとどまるものは表在がんと呼んでいますが、筋層にわずかでも入ったものはすべて進行がんと呼ばれます。従って進行がんと言っても、早期がんに近いものから末期がんにいたるまでさまざまな進行程度が存在します【図2】