食道がんの治療
食道がんに対する治療法には、口から内視鏡を挿入してがんを切除する内視鏡治療、手術治療、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)や、これらを組みあわせた治療などがありますが、食道癌診療ガイドラインに則り、病気の進行や患者さんの状態に応じて最も適切と思われる治療(標準治療)が行われています。
ステージがI期からIII期の食道がんでは、手術でがんを取り除くことが可能であることから、開胸による手術が標準治療として行われています。最近では、II期、III期では手術前に化学療法(抗がん剤治療)を行うことで、さらに治療効果が高まることが分かり、抗がん剤治療を行った後に手術を行う「術前化学療法+手術治療」が標準治療と考えられています。
図24:胸部食道がんに対する開胸および開腹手術
胸部食道がん手術では、がんのある部分の食道と、周りのがんが転移している可能性のあるリンパ節を取り除くことが一般的です。しかし、胸部食道がんの手術は、食道と周りのリンパ節を取り除き、さらに胃や別の消化管を用いて新たに食べ物が通る道を作るため胸部と腹部を開くこと(開胸、開腹)が必要な手術です。
食道がん手術での主な手順は以下の通りです(開胸・開腹手術の場合【図24】)。
図25:胸部食道がんに対する胸腔鏡下手術および腹腔鏡下手術
このように、食道がんに対する手術の方法としては、「開胸手術」が一般的ですが、最近では胸腔鏡下手術が急速に普及してきました。胸腔鏡下手術は、胸部に数か所小さな穴(ポート)を開け、そこから棒状のカメラや鉗子(カンシ)などの器具を入れて手術をする方法です。医師は、胸部に入れた小型カメラによって、モニターに映し出された映像を見ながら手術を行います。小さな穴を数か所開けるだけなので胸部の創は小さくてすみます【図25】。また腹部操作についても同様の方法(腹腔鏡下手術)を行う施設もあります。
胸腔鏡下手術は、ポートを通して手術することで手術器具の操作や視野が限定されることや、医師が食道と周りのリンパ節を直接触って手術することができないことから、開胸手術よりも手術操作が難しく、手術時間は開胸手術よりも一般に長くかかります。一方で、胸腔鏡によって組織を拡大して見ることができるので、より精密なリンパ節の切除が可能になると考えられています。
胸腔鏡下手術は、比較的新しい手術方法であることから本当に胸腔鏡下手術の5年以上の長期的な治療効果が開胸手術に劣らないかどうかは明らかではありません。また最近では右の胸には傷がつかず、首と腹部からだけで食道と周りのリンパ節を切除する方法やロボット手術手技も開発されています。各手術法にはそれぞれ長短所があり、病気の進行や患者さんの状態に応じて各施設で最適と考えられる手術法を検討しておりますので、担当される外科医師とよく相談されるとよいでしょう。
よりやさしい“食道がん”に関する情報や療養に関する情報および食道がんに関するQ&Aは、
国立がん研究センターがん情報サービス(下記リンク)を参照してください。