食道がんの治療
がんが食道より離れた臓器、リンパ節に転移している場合には、より広い範囲の病変に効果を期待できる治療法が必要となります。
手術治療や、放射線治療は局所の病変には有効ですが、遠隔転移がある場合には、効果は部分的なものとなります。
そのような場合は、広い範囲のがん細胞に対して効果を与えることが可能な抗がん剤を点滴あるいは内服します。がん細胞が転移をする場合には、血液やリンパの流れを通じて転移することが多いので、CT検査などの画像検査で見える範囲以上に広がっている可能性があります。
そのような目に見えないがん細胞に対しても効果が期待できるのが、抗がん剤ということになります。
抗がん剤治療を行う場合には、まず患者さんの状態をチェックします。栄養状態や、全身状態は保たれているか、食道の詰まり具合はどうなのか、がんの転移により痛みなどを感じていないのかなどを確認し、抗がん剤を行う前に症状を改善する治療(緩和治療といいます)、例えば、栄養剤の点滴や痛み止め、肺炎などを合併している場合には抗生剤などを行うことがあります。
抗がん剤には副作用があるため、日中起きて動けるくらいの体調でないと、むしろ状態が悪化してしまうことがあるためです。体調が問題ないことが確認された後、抗がん剤の投与を行います。がんに伴う痛みや、食道のつかえがあるような場合には、抗がん剤に加えて放射線療法を症状がある部分へ行うことがあります。
また、全身状態が悪くて抗がん剤が投与できない場合でも、症状がある部分への放射線治療を行う場合もあります。緩和的治療は、抗がん剤を行う・行わないに関わらず、常にがんの治療においては考慮されるものです。症状がある場合には、我慢せずに担当医に伝えることが重要です。
抗がん剤による治療の目的は、がんがこれ以上大きくならないようにすることです。もちろん小さくなったり、消えてなくなったりすることもありますが、基本的には抗がん剤を繰り返し、長い期間治療を続けることで、がんを抑え続けることを目指します。がんがそこにあっても、それによる症状を抑えることで、日常生活を送ることが目標です。抗がん剤を繰り返すことで副作用もありますが、副作用を抑える薬などを使いながら上手に付き合っていくことが重要です。
食道がんの治療に用いられる抗がん剤は、主に3つの系統があり、がんの状態や、患者さんの状態、臓器機能により、より適切な薬剤の組み合わせが選択されます。
何も治療がなされていない場合には、フルオロウラシル系薬剤(5-FU、TS-1)と、プラチナ系薬剤(シスプラチン、ネダプラチン)の組み合わせによる治療が行われることが多いです。推奨される治療法としては、5-FUとシスプラチンの組み合わせで、多くの場合は入院して約5日間の点滴を行い、3~4週間毎に繰り返す方法が一般的です。抗がん剤の効果は個人差があります。
また、有効かどうかについては投与前に分かることは難しく、すぐに効果が出るとは限りません。そのため抗がん剤を投与後、2~3ヶ月毎にCT検査などでがんが大きくなっていないかどうかをチェックします。がんが大きくなっていなければ、また、自覚症状が悪化していなければ、抗がん剤の効果があったと判断され、治療を繰り返し行います。がんの増大や自覚症状が悪化した場合には、薬剤の変更を検討することになります。
フルオロウラシル系薬剤と、プラチナ系薬剤の併用療法の効果がなくなった場合には、タキサン系薬剤(ドセタキセル、パクリタキセル)を用いることが推奨されています。毎週あるいは、2~3週毎に点滴を繰り返すことが多く、最近は外来で投与されることが一般的です。同様に、2~3ヶ月毎にCT検査などを行い、効果を判定します。タキサン系薬剤の効果がなくなった場合には、残念ながら、有効性が科学的に証明されている薬剤はありません。その場合には、患者さんの状態にもよりますが、治験などの実験的治療の選択肢も考慮されます。
抗がん剤の副作用は薬剤により異なりますが、一般的なものは吐き気、食欲不振、口内炎、下痢、脱毛、白血球減少、感染による発熱、末梢神経障害、倦怠感、味覚障害などです。抗がん剤により、頻度や出る時期などは異なります。
また個人差があるため、必ず全員に同じような副作用が出るわけではありません。毎日こまめに状態を日記に記録するなどして、担当医や薬剤師さんと一緒に振り返り、有効な対処法を考えることが重要です。例えば、吐き気が出てきそうな時期には前もって吐き気止めを飲んだり、倦怠感がある時期には体を休めたりするなど、無理に今までの生活を続けるのではなく、自分の状況を知り、それにあった対応を行うことが重要です。
抗がん剤の一般的な副作用への対策については、国立がん研究センターがん情報サービス(以下URL)などを参考にしてください。
URL: https://ganjoho.jp/public/dia_tre/attention/chemotherapy/index.html
抗がん剤の選択肢が無くなってもがんの治療が終わることはありません。前述のように、症状をとる緩和的治療を継続して行い、がんの進行による自覚症状をできるだけ軽減しながら、生活ができるようにします。痛みのコントロールや、栄養をとるための工夫など、緩和的治療の専門の医師や看護師などへ相談しながら行うことも効果的です。生活上どのようなことに困っているのかを担当医や、看護師へ相談しながら治療を行ってください。
よりやさしい“食道がん”に関する情報や療養に関する情報および食道がんに関するQ&Aは、
国立がん研究センターがん情報サービス(下記リンク)を参照してください。