食道がんの診断・検査
食道がん診療においては、各種画像診断によりがんの壁深達度の診断、リンパ節転移の診断、遠隔転移の診断により進行度診断を行っています。 さらに進行度診断に加え、病巣特性(悪性度)の把握および全身状態の評価を踏まえて、治療方針を決定します【図7】
図7:食道癌の治療方針決定までの流れ 食道癌 診断・治療ガイドライン 2012年4月版より引用
腫瘍(がん)の壁深達度の診断では、表在がんは内視鏡検査、食道造影検査、超音波内視鏡検査などを行い、総合的に診断します。一方進行がんにおいては、狭窄が強く、内視鏡検査が不十分である場合や隣接臓器への浸潤の診断のために、CT検査【図8】、 MRI検査【図9】が有用です。
図8:CTによる壁深達度診断
図9:MRIによる他臓器浸潤診断
転移の診断のためには、CT検査やMRI検査を施行します。
特に現在CT検査は高解像度の評価が可能となっており、小さなリンパ節や転移病変を立体的に描出することができます【図10】。MRI検査では拡散強調という機能を用い、転移リンパ節を抽出します【図11】。
図10:造影MD(multi-detector)CTによるリンパ節診断
図11:MRIによる転移リンパ節診断
図12:全身FDG(fluorodeoxyglucose)-PETによるリンパ節転移、遠隔臓器転移診断
また、PET検査は腫瘍で糖代謝が亢進することを利用した質的検査法で、主腫瘍のみならず転移リンパ節や肺、肝、骨転移など、悪性腫瘍の全身評価を容易にします【図12】。
CT検査、MRI検査の形態診断と、造影CT検査、拡散強調MRI検査、PET検査による質的診断を合わせて、評価の精度を高めることが重要です【表1】。
表1:CT、MRI、PETの診断特性の比較
同じ大きさの腫瘍でも、悪性度が異なることがあり、再発率や予後に影響し、治療方針を決定する上で重要な要素となります。
PET検査による糖代謝評価は腫瘍の増殖力を反映した悪性度評価であり、再発予測、予後評価に有用となっています。
図13:FDG-PETによる治療効果判定
食道がん治療を開始する時点では、上記の正確な病期診断、悪性度評価が必須となり、治療法選択時には治療効果予測が、治療後においては効果判定が重要です。
病変部の詳細な評価のために血流状態を評価する造影CT検査、拡散状態を評価する拡散強調MRI検査、PET検査などによる組織学的効果に対応した質的効果判定が役立っています【図13】。
また、治療効果の予測にも、造影CT検査、拡散強調MRI検査の将来性が見出されています。
よりやさしい“食道がん”に関する情報や療養に関する情報および食道がんに関するQ&Aは、
国立がん研究センターがん情報サービス(下記リンク)を参照してください。