臨床・病理 食道癌取扱い規約

臨床・病理 食道癌取扱い規約第12版 刊行のお知らせ

臨床・病理食道癌取扱い規約第12版が9月24日に金原出版より発刊されました。食道癌取扱い規約委員会委員皆様のご尽力により漸く完成致しました。第11版は2015年に発行され、7年ぶりの改訂となります。今回の改訂における基本的考え方は第12版序に記しました。改訂要旨は以下の通りです。今後の診療・研究にご活用頂く様、お願い申し上げます。

日本食道学会理事長
食道癌取扱い規約委員会委員長
土岐 祐一郎

※金原出版(株)のホームページにジャンプいたします。

改訂要旨

  1. 食道の区分としてAe をなくし,食道胃接合部領域(Jz)を新たに規定した。
  2. 画像診断で隣接臓器浸潤の判定に難渋することがあるので,cT3 を切除可能(cT3 resectable:cT3r)と切除可能境界(cT3 borderline resectable:cT3br)に亜分類した。cT3r,cT3br,cT4 の鑑別診断について,参考CT 画像とその根拠となる参考所見を追記した。
  3. cN の診断のため,各リンパ節の領域別にCT によるリンパ節サイズによる診断精度を参照して,推奨カットオフ値を示した。また,PET による診断も参考資料として加えた。
  4. リンパ節転移の程度(グレード)分類において,TNM 分類との整合性を鑑み,領域リンパ節の転移個数による分類を採用した。これに伴い胸部食道癌では占居部位ごとのリンパ節群を廃止し,新たに胸部食道癌全体に対する領域リンパ節を設定した。この際,鎖骨上リンパ節は領域リンパ節ではなく遠隔リンパ節と分類した。ただし,切除による根治が期待されるのでM1aとして他の遠隔転移M1b と区別する。106pre,106tbR,112aoP は転移陽性例では郭清されることも多いが,十分なデータがないので今回は,遠隔転移M1b とした。
  5. リンパ節郭清の程度(D)は術式により規定し,胸部食道癌ではD1:D2 未満の郭清,D2:2領域郭清,D3:3 領域郭清と定義した。ただし,106tbL,111,8a,11p は標準的2 領域郭清範囲に含めるが省略してもよいとした。
  6. 進行食道癌に対する術前治療が標準化されたことに伴い,これまでは共通であった進行度分類を,臨床的進行度分類,組織学的進行度分類に分けてそれぞれ最新のデータに基づき設定した。
  7. 食道胃接合部癌に関して,日本胃癌学会と合同で,食道胃接合部癌の定義および記載項目を策定し,胃癌および食道癌全国登録での取り扱いを整理することで,今後さらなる実態調査を行えるようにした。また,領域リンパ節を策定し,病期診断に関する記載を追記した。
  8. RECIST の治療効果判定規準では食道癌原発巣は非標的病変となっているが,予後に対する影響が大きいので,一定以上の大きさの原発巣に対するCT による効果判定規準の指標を作成した。また同時に内視鏡による原発巣の治療効果判定規準を更新した。さらに,内視鏡によるCR判定後の局所再発の診断基準を策定した。
  9. 内視鏡診断・治療の進歩に伴い,日本食道学会の拡大内視鏡による食道表在癌深達度診断基準検討委員会で策定された分類(2012 年9 月)の内容を規約に記載した。
  10. 「 Squamous intraepithelial neoplasia」を再評価し改訂した。
  11. 従来存在していた手術所見:surgical findings[s](手術肉眼所見,術中画像所見,切除標本の肉眼所見),および内視鏡治療所見:findings in the endoscopic treatment[e](術中所見・切除標本の肉眼所見)は,final findings に含めるとし,記載項目から削除した。