医療機器『ELLA-BDステントPX』の適正使用指針
2026年9月25日
日本食道学会
日本消化器内視鏡学会
『ELLA-BDステントPX』は、2025年3月7日に以下を使用目的とした吸収性食道用ステント(一般的名称)として承認されました。
(使用目的または効果)
本品は、難治性良性食道狭窄の拡張、及び開存性を維持するために用いる吸収性食道用ステントである。吸収・生分解性のため一定期間を過ぎると加水分解される。
本品の保険適用にあたり、下記の通り「適正使用指針」を策定いたしましたので、本指針内容をご確認の上、適正にご使用されるよう、ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。
緒 言
食道狭窄に対する治療は、良性狭窄および悪性狭窄の病態に応じて、薬物療法、内視鏡的拡張術、ステント留置術、外科的治療などが選択される。特に良性食道狭窄においては、バルーン拡張術やブジー拡張術が標準治療として広く実施されているが、一部の症例では拡張術を繰り返しても狭窄再発を来し、難治性良性食道狭窄(refractory benign esophageal stricture: RBES)となることが知られている。RBESは患者のQOL低下や栄養障害を引き起こし、繰り返しの治療介入を必要とするため大きな臨床課題となっている。3)
ELLA-BDステントPXは、生体吸収性ポリジオキサノン(PDO)を素材とする生分解性ステントであり、留置後一定期間拡張力を維持した後、加水分解により体内で分解吸収されることを特徴とする。抜去手技を必要としないことから、既存の非吸収性ステントの欠点を補う治療選択肢として開発され、難治性良性食道狭窄に対する有効性および安全性が報告されている。1)
しかしながら、すべての難治性良性食道狭窄症例に本製品の使用が適切であるわけではなく、病変の原因、狭窄長、狭窄部位および患者背景を十分に評価した上で適応を判断する必要がある。また、本製品の有効性を最大限に発揮するとともに、安全性を確保するためには、適切な患者選択、留置手技および留置後管理が重要である。以上のことから、本製品の適正な使用を推進し、治療成績の向上と患者安全の確保を目的として、本適正使用指針を策定する。
1. 品目
- ●販売名:ELLA-BDステントPX
- ●製造販売業者:株式会社パイオラックスメディカルデバイス
- ●製造販売承認番号: 30700BZX00048000
2. 機器概要
① 使用目的
本品は、難治性良性食道狭窄の拡張、及び開存性を維持するために用いる吸収性食道用ステントである。吸収・生分解性のため一定期間を過ぎると加水分解される。
② 禁忌・警告
〔禁忌〕
<適用対象(患者)>
- ・ステント留置部位に瘻孔のある患者[本品はカバー無しのステントであるため、食道からの漏出により全身状態を悪化させるおそれがある。]
- ・ステント留置部位に放射線療法または放射線化学療法を施行している患者「脆弱な食道組織へのステント留置による損傷及び合併症等のおそれがある。」
<併用医療機器>
- ・異種材料(主に金属)の食道用ステントの併用
<使用方法>
- ・再使用禁止
- ・再滅菌禁止
- ・ステントを重ねて留置しないこと[ステントの重なる部位の破損、再閉塞及び組織損傷のおそれがある。]
〔警告〕
<適用対象(患者)>
-
・食道径が9.4mmまで拡張できない狭窄の患者[本品が挿通しないおそれがある。]
(参考所見:バルーン拡張などの拡張処置後、外径9.2mm以上の通常径内視鏡が通過しない)
<使用方法>
- ・ステント全体及び一部が食道内に残存している場合は、拡張処置を行うことはできない。ただし、ステント留置後48時間以内であれば、ステント拡張が不完全な場合に限り、バルーン拡張術を実施することが可能である。[本品による組織損傷及び穿孔のおそれがある。]
③ 機器の特徴
本製品は外科吸収糸で使用されるPolydioxanoneを素材としたステントである。Polydioxanoneが加水分解反応することにより留置後約1ヶ月半から3ヶ月程度でステント構造が分解されるという特性を持つ。
④ 臨床成績
主な臨床成績の概要を以下に示す。
〔国内治験の成績〕
食道癌根治的治療後の難治性良性食道狭窄患者30例を対象として、多施設単群試験として実施された。処置成功率は96.7%で、留置3ヶ月後のdysphagia score(DS)の改善率は46.7%であった。無症状生存期間の中央値及び治験機器留置後、初回拡張までの期間の中央値は、それぞれ98.0日及び100.0日と、いずれも約3ヶ月であった。安全性に関して、手技開始後から6か月後の観察期間終了までの間、有害事象の発現率は100.0%(30例)であった。そのうち因果関係を否定できない有害事象の発現率は90.0%(27例)、重篤な有害事象の発現率は23.3%(7例)であった。
また、不具合の発現率は10.0%(3例)であった。本治験において発現した有害事象の多くは、予測されるものであったが、重篤な有害事象として「脳膿瘍」及び「食道左房瘻」が発現した1)。
〔国内先進医療Bの成績〕
2012年に「食道癌根治的治療後の難治性良性狭窄に対する生分解性ステント(BD-stent)留置術の有効性評価試験」が先進医療として実施されており、試験機器の有効性の評価指標である3ヶ月後のdysphagia score(DS)の改善割合は66.7%(12/18例)であった2)。
〔海外での治療成績〕
2010年に食道消化性狭窄・術後狭窄患者に対する臨床試験(BEST study)が報告されている。有効性は、45%(9/20例)となりDysphagia Free(固形の食事摂取可能)が示された。また、狭窄症状が再燃した患者においても、症状再燃までの期間は19 ± 4週とその無症状期間は長く、かつ再燃後のバルーン術の実施頻度は有意に減少した3)。
3. 使用方法
使用にあたっては最新の添付文書の使用方法欄を参照すること。
4. 実施基準
① 実施施設基準
- ・対象とする疾患の治療について、専門的知識を有す複数の診療科の医師らによるチームのもとで適応となる患者選択の妥当性を協議する体制を有す施設であること。
- ・緊急時に適切な処置を講ずる機能を有す施設であること。
- ・治療後の適切なフォローアップ体制を有す施設であること。
② 実施医師要件
- ・食道ステント留置術の経験を有する医師
- ・難治性良性狭窄に関する十分な知識・治療経験を有する医師
③ その他
- ・治療対象領域に関連する医学会等に協力し、本品を使用した患者の情報収集に努めること。
5. 留意事項
〔適応に関する留意事項〕
- ●良性食道狭窄の治療選択については、最新の知見やガイドライン等に従うこと。
- ●以下については、有効性及び安全性が評価されていないため、最新の知見やガイドライン等を参考に適切に判断すること。
- ・アカラシア及び逆流性食道炎による狭窄を有する患者。
- ・嚥下機能が著しく低下している、もしくは廃絶している患者。
- ・国内臨床試験においては、20才以上の成人を対象として評価を行っているため、小児等への安全性は評価されていない。
- ●先天性良性食道狭窄については、治験で1例経験をしているが、食道全体が狭いため本ステント留置には十分な検討を行う必要がある。
〔機器の使用に関する留意事項〕
- ●事前に狭窄径と狭窄長を測定し、ステントが狭窄をカバーできるよう、ステント長が狭窄長よりも2cm以上長いものを選択し、狭窄径については、9.4mm以上の食道内径を有していることを確認し使用すること。
- ●本ステント留置により、疼痛や出血など伴う場合は、通常の処置により対処するが、症状が治まらない場合は、ステントの抜去も検討する(抜去については48時間以内が望ましい)。
- ●本ステント留置後、粘膜過形成が起こるため、定期的な内視鏡的処置(スネアやアルゴンプラズマコアグレーション焼灼での処置等)が必要となる。




- ●ステント自体が自然に分解・脱落するまで、ステントの追加留置は行わないこと(分解過程でステント破片等による穿孔等の有害事象が発生する可能性があるため。)。
- ●ステントの反復留置については、ステント分解後、再狭窄をきたした場合に検討すること。
- ●本品による治療が困難と判断した場合には、速やかに他の処置を講ずること。
〔その他〕
- ●本品を使用する前に必ず企業が提供する最新の添付文書を参照すること。
- ●本指針は臨床使用の状況により見直し・適宜必要な改訂を行う。
6. 参考文献
- 1)Yano T, Yoda Y, Nonaka S et al. Pivotal trial of a biodegradable stent for patients with refractory benign esophageal stricture. Esophagus. 2022; 19:516-524
- 2)Yano T, Yoda Y, Nomura S, et al. Prospective trial of biodegradable stents for refractory benign esophageal strictures after curative treatment of esophageal cancer. Gastrointest Endosc. 2017;86:492-499
- 3)Alessandro Repici, Frank P. Vleggaar, Cesare Hassan, et al. Efficacy and safety of biodegradable stents for refractory benign esophageal strictures. the BEST study. Gastrointest Endosc. 2010; 72: 927-3
- 4)PETRA G.A. VAN BOECKEL, FRANK P. VLEGGAAR, and PETER D. SIERSEMA, A Comparison of Temporary Self-Expanding Plastic and BiodegradableStents for Refractory Benign Esophageal Strictur. CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2011;9:653– 659








